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2009年7月 9日 (木)

立て!鏡のような波頭の上に 46話 街角では少女が自分を売りながら あぶく銭の為に何でもやってるけど

 ――家ヲ出タイノ・・・裕士は、ユイとミカを思い出した。彼女達は、家を出て、自分の体を売ってでも力強く生きている。ある意味自由であり、輝かしい生命力に溢れている。裕士は軽蔑するつもりはなく、本心でそう思った。どこでも、どんな方法でも生きていける逞しいほどの生活力。尊敬の念さえ感じる。果たして自分はそこまでしたたかに生きていけるだろうか。

「だったら、今すぐ出ればいいじゃん。」

 ユイやミカに比べれば、じれったく思えたルカに裕士は少しの邪気を込めて言い放った。しじまが流れた。やがて、灯台の光が一周した。ルカは思い口を開いた。

「・・・、私の友達にも家庭の事情で家を出た娘がいるわ。私だってすぐにでも家を出たい。でも、高卒で家出をした女の子が働ける場所なんて限られてる。中には、売春まがいの事をしてお小遣いを稼いでいる娘だっているけど・・・、私にはできないわ。それだったら、死んだ方がましよ。」

 瞬きをしないまま話すルカの頬を一筋の涙が伝った。裕士は悪い事を言ったなと思った。ルカは続けた。

「あと半年だもの。あと半年我慢して大学に入ったら私の未来が開けるの。私が自立して生きていくためには、今は父さんの暴力に耐えてでも、看護学部に受からないといけないの。だから、あともうちょっとなの・・・」

 そこまで言うと、ルカは黙った。泣かなかった。蒼白い月明かりに照らされた目の前の海をキッと、見つめていた。瞬きもせずに、射抜くように。しばらくして、一回瞬いた時、線のように細くしずくが零れた。決して負けない、強い意志を感じた。針のように細い片足で、倒れまいと必死に踏ん張るフラミンゴ。凛として、美しいと思った。ルカは、きっと体を売るくらいの状況になったら、平気で名誉の死を選ぶんだろうなと思った。険しい山の頂きに咲く高山植物のような高潔さ。

「悪かったね・・・あと、少しだもんね。がんばろうね。俺が大人だったら、今すぐにでも連れ出してあげられるのにね・・・」

「ううん、今日こうして海に連れてきてもらっただけで元気が出たわ。明日からまた頑張れるわ。」

 ルカが笑った。それは、無理やり作った笑顔だったかもしれないけれど、彼女の強さのように思えた。ユイやミカのような生き方。ルカの生き方。どちらも、力いっぱい必死で生きている。いろんな生き方がある。自分はどう生きるのか。何ができるのだろうか。そう自問した裕士にルカは聞いてきた。

ユーシくんは、どういうお医者さんになりたいの?

**************【次回へ続く】*********************

注:この小説はフィクション(嘘)です。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

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