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2009年6月

2009年6月26日 (金)

立て!鏡のような波頭の上に 45話 DV

「働いて、一人暮らしかぁ。凄いね。俺、受かる事に必死で、そこまで考えてなかったよ。」

 ルカは、また黙っていた。1分に一回だろうか、忘れた頃に一周する灯台の光が再びよぎった。ルカは遠くを見たままだった。長い睫毛が綺麗だった。

「お父さんはね、ほんとは優しいの・・・。だけど、勤めている会社が、業績が厳しくて、いろいろ無理してるらしいの。それで、昔はたまにだったんだけど、時々家で暴れることがあって。お酒も毎晩手放せないようになって、最近は、膨らんだ風船が破裂するみたいに、しょっちゅう暴れるようになったの。」

「大変だね・・・」

 裕士はなんて言っていいか判らなくて、それだけ言うのが精一杯だった。が、ルカは裕士に話している、というよりは、自分自身に話しているようだった。

「そんな会社ならいっそのこと、潰れてしまえばいいのにね。そうじゃないのかなぁ、うちのお父さんが弱すぎるのかもね・・・。」

「でも、子供に暴力を振るう理由にはならないよ。」

「うん・・・。お父さんは今でも好きだし、本当に感謝してるの。でもね、私は小さい時からずっと、お父さんのDVに耐えて来たから。経済的に自立できたら、とにかく早く家を出たいの。」

**************【次回へ続く】*********************

注:この小説はフィクション(嘘)です。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

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2009年6月19日 (金)

立て!鏡のような波頭の上に 第1章 初夏~ユイ編あらすじ

裕士は、医学部志望の予備校生。ナンパで知り合った少女ユイと一晩過すが、有り金を持ち逃げされる。取り残されたベッドの上で、裕士はかつて味わったいくつかの惨めな出来事を思い出す。海辺の田舎町で必死に生きる若者を、溢れる感性と静謐かつ拙い文章で描く青春スペクタクル短編。

**************【次回へ続く】*********************

注:この小説はフィクション(嘘)です。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

第1章 初夏~ユイ編を削除して、上にまとめました。 ↓クリックよろしく!Banner2_7

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2009年6月 4日 (木)

立て!鏡のような波頭の上に 44話 他愛も無い会話

ルカは傷の無い右の顔側、つまり裕士の左側に座った。女心だと思った。それを察すると裕士は何も言えなかった。気を逸らそうと、共通の友達、伊藤峻や横山良幸の近況を無理矢理、話した。

「シュンもヨシユキもケイゴも皆、大学違うけどさ。D1とかいうサークルに入ってさ。夏はテニス、冬はスノボとか行くんだってさ。って言ってもシュンもヨシユキもテニスって柄じゃないからさ。専ら飲み会要員らしいぜ。ほぼ、毎週合コンらしいよ。シュンはヘルペス移されたけど、五股もかけてるから、誰から移されたか判んないってさ。」

「シュンくんはかっこいいからね。モテるよね。」

「でもあいつさ、好き嫌いがはっきりしてて、可愛くない娘の前じゃ、愛想笑い一つできないんだ。顔にはっきり出るんだ。ヨシユキは気を遣って、そっちの娘のフォローばっかしてるから、みんなからブス専とかあだ名つけられちゃってさ。本人その気無いのに、可愛そうだぜ。ヨシユキも人が良すぎるんだよな。」

「女の娘もそういう優しさに気付くと良いんだけどね。あ、ケイゴ君、この前駅で見かけたけど、高校の時と凄い変わったよね。アフロヘアにしてたし、日焼けもして、髭も生やして、もう別人。高校の時の華奢で、可愛いイメージ、もう無いよね。」

「ああ、あいつはちょっと突っ走ってるよな。卒業旅行で、オランダ行って変わったよ。だってこの前さ・・・」

 と言いかけて、口を噤んだ。山﨑圭吾宅のマリファナ・パーティは流石に話せない。大学に行って、コンパやサークルで活き活きとしている彼らの活動報告をしている内に、自分には高校卒業後、取り立てて話す事など何も無い事に気付いて、裕士は虚しくなった。

「みんな、楽しそうだね。」

 ルカの横顔に灯台の灯が走った。彼女は膝を抱えて、その上に顎を乗せ、遠い、遠い目をしていた。ルカはどんなキャンパス・ライフを過すのだろうか。

「ルカは、大学行ってサークルとか入るの?」

「サークルかぁ。あんまり考えた事無かったな。私は、とにかく早く、看護師国家試験、取りたいから。」

「凄いね。俺、遊ぶ事しか考えて無かったよ。医師国家試験は卒業後でも良いかなー、なんてさ。その前に医学部に受かるかさえ判んないし。こんなに苦労して大学行くんだから、行ったら目一杯遊びまくろうって。ルカは大学行って遊ばないの?」

 何か彼女の爆弾に触れたのだろうか。彼女は、黙り込んだ。しばしの沈黙が流れた後、ずっと遠くを見たまま、彼女は重い口を開いた。

「家を出たいの・・・。大学行ったら、働いて、学費も自分で稼いで、一人暮らしをしたいの。」

**************【次回へ続く】*********************

注:この小説はフィクション(嘘)です。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

構想は決まっているのですが、このまま行くと原稿用紙300枚を優に超えてしまいそうです。初めて小説なるものを書いたので、距離感が判りませんでした。やばい、はしょらなきゃ。次の構想も浮かんできたし、大作家じゃないんだから、短編で良かったのだ。でもね、どうしてもこれを書かなきゃ私は次へ進めないのです。早く終わらそ、終わるかな。ちょっくら充電して来ま~す

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2009年6月 3日 (水)

立て!鏡のような波頭の上に 43話 晩夏/今から早朝サーフィンに行くぞ!

 江ノ島海岸は、湯河原の静かな浜に比べて都会的な華やかさを帯びていた。海岸通りに立ち並ぶ、ラスベガスのホテルのようにポップな、そして色とりどりの電飾のラブホテル群を通り抜けて、海辺に出た。海岸では、何組かの大学生のようなグループがきゃっ、きゃと奇声をあげながら、あちらこちらで花火を打ち上げていた。突発的に上がる打上花火が、不意をつかれたサプライズのプレゼントのようで奇麗だった。あと数日で九月になる。取り壊され始めた海の家も数軒あった。まだ残っている海の家には灯りが点り、中では人々がお酒を飲んでいた。皆、最後の夏の余韻を惜しんでいるかのようだった。裕士とルカは、何も言わずに手を繋いで、猫の額ほどの江ノ島海岸を一回り歩いた。力無い波の音は穏やかで、何も干渉しない距離感を保っているように優しかった。海辺を見下ろすコンクリートの階段には、二つの黒い影が等間隔で、まるで一休みする鳩の群れのように並んでいた。あそこに座ろうか、と裕士は促し、影の途切れた壁際の階段に二人は腰を下ろした。

**************【次回へ続く】*********************

注:この小説はフィクション(嘘)です。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

忙しい5月が終わった!日も長くなった!今日からやっとサーフィン再開だ!!私は、波情報はここで確認しています。私の小説の舞台となっている湯河原吉浜のライブカメラはこちら。(湯河原町提供)

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2009年6月 1日 (月)

立て!鏡のような波頭の上に 42話 日曜日の夜さ♪連れ出してあげる

 裕士は追った。彼女の顔の怪我を見て、追わずにはいられなかった。じきに追いつくと、ルカは走りつかれたのか、立ち止まった。立ち止まると、傷だらけの顔を隠すように、裕士の胸にしがみついてきた。そして、泣いた。

 ただ、ただ泣き続けた。裕士は立ち尽くして、抱きすくめる事しかできなかった。

「裕士くんだけには、見られたくなかった・・・」

 ルカは、ぽつりと呟いた。

 どうしたの?とは、裕士は聞けなかった。聞いてはいけないような気がした。ほどなくして、ルカは泣き止んで歩き出した。

「お父さんに、お酒を買いにいかないといけないの・・・。」

 裕士は黙って横に並んで、酒屋までの道のりを一緒に歩いた。酒屋までは、二人は何も喋らなかった。握ったルカの手が、妙に冷たい事を裕士は気にしていた。酒屋に着くと、酒屋の蛍光灯に目を細めて、ルカは店に一人で入っていった。迷いもせず、慣れた様子で棚の前に行き、ある銘柄の一升瓶を手にすると、彼女はすぐに出てきた。帰りは、川沿いの道を歩いて帰った。裕士は、一升瓶を持ってあげた。瓶は思いのほか、ずしりと、重かった。二人は、川を見ながら歩いた。川は音も立てずに静かに流れていた。漆黒の空を映した水面は、まるでこの世の全てを飲み込んでしまうように、重く、巨大な生き物のようにうねって流れていた。しばらくして、ゆらぐ水面に心解かされたように、ルカが話し始めた。

「ごめんね、急に行けなくなって・・・」

 ルカの顔に只ならぬ事態を察せざるを得ない裕士は、ううん、と首を振った。

「お父さんがね、時々、暴れるの・・・。お父さんの事悪く言いたくないんだけど・・・」

 と言って、ルカは再び泣き出した。

「いいよ。」

 裕士は、ルカの頭を撫でた。

「ほんとうはね、今日凄く楽しみにしてたんだ・・・」

 泣きじゃくるルカを抱きすくめながら、裕士は自分でも思い掛けない事を提案した。

「今からでもいいから、行こうぜ!」

「え、でも・・・」

 裕士は、ルカの手を握って、走り出していた。ルカの事情は良く判らない。ただ、決して彼女にとって良い状況であるはずが無い。とにかく、遠くへ。ここじゃない、どこか遠くへ、彼女を連れ出したかった。俺が連れ出してやる。信じるなら、着いて来い!きっと、今よりは良いはずだ!

 ルカのマンションに着くと、裕士は、自分でも驚くほど冷静に彼女を言いすくめた。

「酒を置いたら、すぐに出て来い。行こう。今日は何が何でも約束通り、海まで行こう!」

 ルカは、裕士の気迫に押されたように、頷いて、家に走っていった。裕士は、ルカの後ろ姿に投げ掛けた。

「三分経っても出てこなかったら、俺が連れ出してあげる!」

 裕士が考える間もなく、すぐにルカが飛び出してきた。ブルン・・・バイクにキーを差し込み、ルカにヘルメットを被せると、飛び出すようにバイクは走り出した。

「しっかりつかまって!」

 ルカが裕士に回した手にぎゅっと力が入った。

**************【次回へ続く】*********************

注:この小説はフィクション(嘘)です。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

今日のインスパイアは、これ↓。COMPLEX「恋をとめないで」吉川さんの無茶苦茶振りが大好きです。 ↓クリックよろしく!Banner2_7

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